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中村敏也の元気キッズ保育園の秘密 vol.33「当事者になって初めて気づくもの」

参考:メルマガバックナンバー 2023.6.8 配信

中村敏也の元気キッズ保育園の秘密 vol.33「当事者になって初めて気づくもの」

 


中村敏也の元気キッズ保育園の秘密


中村敏也の元気キッズ保育園の秘密 vol.33
「当事者になって初めて気づくもの」

こんにちは。
株式会社SHUHARI 中村敏也です。
随分久しぶりの配信になりました。
みなさま、いかがお過ごしでしょうか?

コロナが5類に分類が移行され、街を歩いているとマスクを外している方が増え、保育園でもマスクをとる職員が増えてきて、子どもたちにとっての不思議でとても重い3年間がやっと終止符をうちそうですね。

私自身、まだこのコロナ禍期とはなんだったのかと統括できていないので、
あたらしい気づきがあれば皆さんにシェアしていきたいと思います。

さて、先日、石川県金沢市にて、「ごちゃまぜ」を体現しているとても素敵なコミュニティーを運営している社会福祉法人 佛子園の「Share金沢(シェア金沢)」と「B’s」「行善寺」に視察に行ってきました。

「社会福祉法人 佛子園」
http://www.bussien.com/

「Share金沢」
http://share-kanazawa.com/
は、1つのエリアの中に、様々な人が集い、交流、生活が育まれるように設計された環境がありました。

地域の方が利用する温泉やブータンそばの店、カフェや、シェアキッチン、クリーニング店、サービス付き高齢者向け住宅、グループホーム、学生のレジデンス、児童入所施設(小規模ケア)などなど、障害者の方、高齢者の方、要介護の方、健常者の方、地域の方が自然と同じ場所に集い、交流していました。

「B’s」
http://www.bussien.com/bs/
「行善寺」
http://www.bussien.com/gyozenji/
には、サービス付き高齢者向け住宅、グループホーム、クリニック、保育所、児童発達支援事業所、就労支援A型、B型、移行支援、生活介護、相談支援、フィットネスジム、プール、温泉、カフェ、キッチン、お花屋さんなどなど。
本当に色々なものがごちゃまぜにあり、初めて訪れた私は、まずその情報量の多さに一瞬パニックでした。

施設に到着した時間が午後1時ごろ。
中庭には大きな遊具があり、その周りにカフェや、クリニック、保育園などがありました。
カフェでは大きな音で最新のヒットナンバーが流れていて、楽しそうに昼間からお酒を嗜む方もいらっしゃいます。
でも、反対側にはお昼寝中の保育園があります。
一瞬、これって?と思いましたが、
これが日常であれば問題ないのだなぁと思いました。

とても天気が良い日で暑かったので、
カフェで抹茶パフェを頼み、アイスを堪能していたところ、
距離感を使うのが苦手?な方が、僕の顔の近くまで顔を近づけてきて
「美味しい?」と聞いてくれて、
「美味しいです!」と答えると、
ちょっとだけ嬉しそうにして去っていきました。

お土産を買いたいなと売店に行って、ブータンそばを選びレジに行くと、店員さんがハッとした顔をして、何も言わずにどこかへ行ってしまいました。
5分くらい帰ってこず、レジにも少し列ができてしまっていました。
5分後に戻ってきた店員さんが
「賞味期限が近かったので、あたらしいの持ってきました」
と息をはあはあして言ってくれました。
「それなら先に言ってくれてもよかったのに」
と普段なら思うところ、実は全くイライラしませんでした。
レジ待ちをしている他のお客さんも全くイライラしていなくて
「そういうこともあるよねぇ」と、
なんとなくした一体感があり、なんだか時間の流れがゆったりしていて、
思いやりがある空間がそこにありました。
普段から、障害のある方、要介護の方、一般の方、子どもなどがこの場所に集っているので、そういうこともあるよねっていう利用者の寛容度合いがすごいです。

とても自然に様々な方がいることで、
この空間の時間がとてもゆったりしていて
本当に平和でした。
 
 
私たちは、当事者になって初めて色々なことに気がつきます。

例えば、子育て。
妊娠をして初めて子育てについて真剣に考え始め
出産して、初めて、子育ての大変さと喜びを知り、
離乳食はどうすればいいか?
夏の服装はどうすれば?
はいはいの時期は?
言葉はいつから出てくるの?
などの疑問が出てきて、色々と調べます。
そしてそこでリアルでママパパコミュニティーができていきます。

子どもが周りの子よりなんだか少し変わっていると感じて、発達障害とは何かを調べます。そして思うところがあれば療育施設にいき、そのコミュニティーに属します。

病気になって初めて健康の素晴らしさに気がつきます。

事故などで、後遺症が出てくると障害について考えます。

家族に要介護の方がいると、介護の大変さなどがわかります。

要は、
自分の身の回りにある現実=環境しか、自分にはあまり見えないし聞こえないのです。

これはネットの世界も同じです。
ツイッターやインスタなどの好きな情報をフォローすると、その世界が中心の価値観になります。
検索履歴をAIが勝手に学習して表示をするので、好きな広告や関心のあるニュースしか目にしなくなります。
普段からテレビのニュースや新聞を見なければ、自分のコミュニティーの情報しかありません。
非常に怖いです。

これって生活の場でも同じです。
学校に行けば、学校という小さなコミュニティーの中で、もし、先生が教えて、生徒は話をきくというスタンスしかなければ、それが絶対になり、息苦しいと思っても我慢するしかありません。
だって、子ども達は他の選択肢がわからないのです。

障害者の方が施設の中だけ、支援者だけに支えられている状態であれば、そこにしか居場所がなくなります。支援される側と支援する側だけのとても狭い世界。

高齢者の方が、コロナ禍で3年間面会もできませんでした。
隔離が当たり前になり、会話が少なくなり、外は危険という情報しかないので、何も考えることなく受け入れてしまいます。
余談ですが、3年間引きこもると死亡率が2.2倍になるそうです。

*参照
https://business.nikkei.com/atcl/forum/19/00037/080400002/
日経ビジネス[解説]高齢者の引きこもりは死亡率2倍、避けるためにできること

つまり、実生活の場も、ネットの世界も分断されていることで、身の回りの情報が全て自分にとっての正しい世界となってしまっているのです。

そこで、
佛子園の取り組みのように、
子ども、大人、高齢者、子育て世代、障害を抱えた人、要介護の方などが身近に当たり前にある環境があれば、自然と自分の周りの世界が広がっていきます。
色々な価値観を自然と受け入れることができるようになります。

今、国、自治体、企業が声高に叫ぶ「多様性」を認めようという掛け声なんてなくても、当たりまえに地域の生活から分断を無くしていけばいいだけなんだと思います。

インクルーシブなんて声高に言わずに、もっと生活をみんなでできるような社会の設計こそが大事なんだと思います。
 
 
次回は、出生数78万人の衝撃について考えていきます。
 
 
 
最後に宣伝です。
来る 6月29日(木)に
私、中村敏也の第3冊目となる本が出版されます!

タイトルは
地域を変える施設になる
児童発達支援 実践の教科書

1冊目の本「保育園運営の教科書」は、全国の悩み深い園長先生に向けて応援したい想いで書いたところ、たくさんの方から共感をいただきました。
たくさんの出会いにも繋がり、本当に出版してよかったと思っています。

今回は、
発達支援の施設「児童発達支援事業所」を運営、実践をしてきた、当事者としての情報をめいっぱい詰め込みました。

多様性を社会で認めていくためのステップとして、
児童発達支援施設は有意義であり、決して分断を生むものではないです。
興味がある方は、ぜひご購入いただけると嬉しいです。

amazonでご購入いただけるようになりましたら、またお知らせいたします!

地域を変える施設になる 児童発達支援 実践の教科書 中村敏也著

 
 

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株式会社SHUHARI
元気キッズグループ 代表 中村敏也

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子どもたち、保護者、保育士にとって、とても幸せな世界になることを願って、少しでもお力になれれば幸いです。

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中村 敏也

Nakamura Toshiya
埼玉県内に、保育園、児童発達支援施設、保育所等訪問支援事業所、病児保育室、放課後児童クラブ、相談支援事業所を運営。子どもが笑顔で過ごせる保育園にするためには、職員が楽しめる職場であることが重要。職員が意見を言いやすい職場の雰囲気作りや福利厚生面など、働きやすさも重視した環境作りに力をいれている。
株式会社SHUHARI代表取締役
株式会社sopo代表取締役
新座市子ども子育て会議委員
中村敏也