参考:メルマガバックナンバー 2022.1.27 配信
中村敏也の元気キッズ保育園の秘密 vol.23「商品化する子ども達と、レジリエンスやグリッドについての考察」
中村敏也の元気キッズ保育園の秘密
中村敏也の元気キッズ保育園の秘密 vol.23
「商品化する子ども達と、レジリエンスやグリッドについての考察」
ピケティ「21世紀の資本論」で富が1%に集中している事実を付けつけられ、資本主義への疑問が囁かれ始めてから数年、今回の新型感染症の中でも、お金があるものに富が集中し、非正規労働者などの持たざる者がますます貧困化しています。
そんな中で、日本でも岸田首相が「新しい資本主義」を提唱するなど、今まで通りではうまくいかない世の中なのかな?っていうのはみんなが感じていると思います。
幼児教育界にも起きている「所得格差」
「所得格差」は、幼児教育界にも大きなうねりを伴って巻き起こっています。
都心部における私立小学校への受験者数が、コロナ前と比べ10%アップと、かなり大幅に増えています。
公立の小学校のコロナ禍の対応に比べ、私立の方が、オンライン化などの対応が迅速かつスムーズに行われたとし、より良い教育を受けさせたい家庭が増えたのが原因とのこと。
しかし、小学校から私立へ通わせることができるのは、やはり所得が高い家庭に限られているために、ここでも貧富の差が、教育の機会の不平等を推し進めているのがわかります。
このようにある程度の高い所得者層は、ますます我が子に良い教育をしよう
という流れが起きているのです。
例えば
- サッカーチームでレギュラーを取るために、所属チームとは別にプライベートコーチや、サッカー塾みたいなところに通わせる。
- 中学受験用の塾に通わせているが、成績順のクラスが上がらないために、追加で他の補講塾へ通わせる。
- キャンプが教育的に良さそうだからファミリーキャンプに行こう!
- ピアノが情操教育に良いから3歳からはピアノを学ばせよう。そのためには、ピアノに興味を持たせたいからリトミック教室に0歳児から通わせよう!
- どうやらモンテッソーリ教育がいいらしいから、取り入れている幼稚園に入れるために引っ越しをしよう。
- イエナプランを実施している小学校があるから長野に家族で引っ越して、父親は東京に平日は単身で住み、週末長野に帰る2拠点生活をしよう。
などなど。
環境を整えることはとても効果的で、
子ども達が楽しんで行っているのであればとても良いことだと思います。
しかし、いろいろな経験をさせるためには、とにかくお金がかかります。
親の経済力で、子どもの経験値を買っていく、いわゆる「課金ゲーム」感が満載です。
商品パッケージ化する子どもたち
そして、さまざまな幼児教育教材や、習いごとをし、
これをすれば他の子に遅れることがない、秀でることができるなど、
「あれ」と「これ」をすれば問題ない
など
いわゆる
『さまざまな経験をすることで、地頭の良さを培い、かつ、成績をよくして良い学校に入れ、良い大学にいき、良い会社に入るまでのパッケージ』
が所得が高ければ買えるのです。
それはまるで子どもをこの「商品パッケージ」に当て込んでいく感じです。
子どもを「商品パッケージ」にして、
このパッケージ通りに子育てをすること、親の満足感を得ることで、
今の幼児教育産業は成り立っています。
でもこれって、
こうした方が成功率が高いから、我が子のために親も頑張ってお金を工面していろいろやっちゃうんです。
だから決して悪いことではないし、子ども思いの素晴らしい親の行動です。
いわば需要と供給がマッチしているから、ますますこの流れに拍車がかかっていきます。
けれども、
もし、そこに子どもの気持ちがともなっていないと、
このパッケージ商品は有害になってしまうのです。
「グリッド」と「レジリエンス」
このパッケージ商品のなかでの謳い文句であって、
最近の子育て世代の意識の高い人達には当たり前になりつつある概念に
「グリッド」と「レジリエンス」などの非認知能力
【やる抜く力】と【変化に対応できる力】があります。
これ、ほんと、これ正しい概念ですよね。
だって、こんなに変化の激しい、まさに激動の時代の現代社会で、少しの失敗でめげてないでちょっと踏ん張る力の「グリッド」だったり、昔のやり方が通用しないから新しいこと試していこうよ。対応してこうぜっていう「レジリエンス」は、超重要ですよ。
わかる、わかるよーって思うのです。
けど、けどね。。
じゃ、どうやったら身につくのかっていうと、
実際のところ、これっていう決定的なものってないのです。
巷に溢れる勉強の教材は、
このパッケージを買えばグリッド、レジリエンスが身につきます
っていうのですが、
いつ、どこでそんなエビデンスが取れたんだろう?って思うのです。
思考の手順を遊びの中で再現するとか、
答えのないものを課題にして取り組むとか、
たぶん一部の情報を加工すれば、
なんとなくそれらしいものはとれると思うけれども、
本来、10年くらいの単位の研究をしなきゃ無理なんじゃないかと思うのです。
「信頼できる人」との愛着形成
本当に効果がある教材というのは、
その時の雰囲気とか、その子の性格とか、環境とかに大きく関わってくると思うのです。
ですので、
もちろん保育園でもそんな空気感や環境を作ることをとても大事にしています。
こうした雰囲気づくりをすることで、主体的に楽しみながら、あそび続ける子ども達の姿をたくさん見ることができるのです。
ではその雰囲気ってどうやって作るのか?
何が大事なのかな?
っていうと、
【信頼できる人】がいること
なんです。
マシュマロテストという有名な実験があります。
目の前のマシュマロを我慢できた子の方が将来的に成功しやすいという傾向がでた実験です。
実は、この実験は、条件を変えてみると結果に違いがでてきます。
実験前にマシュマロを渡す大人と遊んだグループと
遊ばなかったグループでは、
遊んだグループの方が我慢できる割合が高かったというレポートがあるのです。
つまり、
なんとなく知っているし、遊んでくれている「信じられる人」
という大人からの指示なら従いやすいのです。
たとえば、親からネグレクトを受けていて食べるものも与えられない子供に、マシュマロを我慢させようとしても、今、食べなければ無くなってしまうという本能にしたがい躊躇なく食べます。
そこに信頼できる経験がなければ将来を見通して行動なんてできないのです。
「グリッド」や「レジリエンス」というような非認知能力の基礎には
他人を信じられるかどうかという、
本当に当たり前のことが大前提にあるのです。
親を信じられること
先生のことを信じられること
大人を信じられること
友達のことを信じられること
が、その場を豊かにし、
安心して学習=あそびに取り組めるんです。
ですので、
幼児教育の情報にふりまわされている保護者のみなさんや、
グリットとかレジリエンスとかを商品パッケージのように扱っている教育関係者の皆様には
一度、たちどまって
そこに愛があるのか?
と見つめ直し、愛着形成を第一に取り組んでほしいなと思うのです。
お金がある人が勝ちやすい世の中ですが、
お金だけあっても、愛がないとイケてないよ
ということです。
SDGsを実現するために
本来ならば、お金があってもなくても、
平等に良質な教育や、生活基盤がなくてはならないのです。
それがSDGs(持続可能な開発目標)を実現するってことです!
これは、社会の責任だし、政治の責任であると思います。
今、こんな世の中になっているのは、
そのような政治を許している我々市民の無知と、
しょうがないよ という諦めなんだと思います。
自分の意見や言いたいことっていうのは、
勝手にできて来るのではなく、いろいろな影響があってでてくるものです。
知りたい情報だけを取り入れるのではなく、
いろんな情報に触れて、
家族や仲間と話し合ったりして、
自分の意見を見出していく。
そして、変だなって思ったら、ぜひ変だーって発信していきましょう!
それが、社会の不平等を是正する一つの力になると思います。
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株式会社SHUHARI
保育園元気キッズ 代表 中村敏也
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子どもたち、保護者、保育士にとって、とても幸せな世界になることを願って、少しでもお力になれれば幸いです。
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